ラーンの大斧が石壁を粉砕した。埃埃が立ち上り、イシェが咳き込みながら「また無駄なことを…」と呟いた。
「ほら、いい感じの隙間だ!もしかしたら奥に何かあるかも!」
ラーンは興奮気味に言ったが、イシェは彼の背後から「遺跡は宝の山ではなく、罠ばかりだと覚えなさい」と冷静に告げた。
その時、テルヘルが立ち止まった。「静かに」と彼女は手を上げ、耳を澄ました。遠くから、金属音が響いてきた。
「何だ?敵か?」ラーンの手が剣の柄に伸びた。イシェも警戒しながら周囲を見回した。
テルヘルは首を横に振った。「違う。足音だ。複数いる。しかも…」彼女は眉をひそめた。「軽快な足音だ。重装備の兵士ではない」
影が壁に映し出される。狭い通路から、何者かがゆっくりと姿を現した。それは子供たちだった。薄汚れた衣服を着た子供たちは、疲れ切った様子で、怯えた目つきで三人を見つめていた。
「ここは…?」
一番年少の女の子が震える声で尋ねた。ラーンは彼女らに優しく微笑んだ。「大丈夫だ。僕たちは危害を加えない」
しかし、テルヘルは警戒を解かなかった。子供たちの視線が後ろにある暗い通路に向けられていることに気づいたのだ。
「何かいるのか?」
イシェが尋ねると、子供たちは互いに顔を見合わせた後、小さな声で答えた。「囚人…逃げた囚人が…」
その瞬間、通路の奥から咆哮が響き渡った。ラーンは剣を抜き、イシェも daggers を構えた。テルヘルは冷静に状況を判断し、子供たちに指示を出した。
「お前たちを安全な場所へ連れて行く。僕たちがこの囚人と対峙する」