ビレーの薄暗い酒場「錆びた剣」に、ラーンとイシェは腰を下ろした。テルヘルが用意した硬いパンを齧りながら、ラーンの顔は曇っていた。
「また空振りか？」イシェは疲れた声で言った。「あの遺跡は本当に財宝があるのかよ？」
ラーンはテーブルを叩いた。「あるに決まってる！俺の勘がそう言ってるんだ！」
だが彼の目は自信なさげだった。最近、彼らの遺跡探索はいつも同じ結果に終わっていた。危険な罠を回避し、汗だくで奥深くにたどり着いても、そこには価値のあるものなど何もない。
「あの日、ヴォルダン兵が襲ってきた時のように…」イシェが呟くと、ラーンは顔をしかめた。「ああなったら俺たちは終わりだ」
テルヘルは静かに酒を注ぎながら言った。「諦めるのはまだ早い。次の遺跡は情報が違う。古代の地図にも記された場所だ。必ず何か見つかるはずだ」
しかし、彼女の言葉もラーンの心を奮い立たせるには至らなかった。彼の心の中には、かつてヴォルダンに奪われた故郷の風景が重く影を落としていた。
「俺たちは本当に大穴を掘り当てられるのか？」ラーンは自問自答した。イシェの鋭い視線を感じながらも、彼は自分の弱さに打ちひしがれた。
その時、 tavernのドアが開き、一人の男が入ってきた。彼は黒ずんだマントを身にまとい、顔には深い傷跡が刻まれていた。男はテーブルに近づき、テルヘルに向かって言った。「情報がある。ヴォルダンと関連した遺跡だ。危険だが、大いなる報酬が待っている」
テルヘルの目は光り輝いた。「詳しく話してくれ」
ラーンの心にもわずかな希望の火が灯った。彼は立ち上がり、剣を握り締めた。彼の視線は、男の鋭い眼光と交錯した。
「ヴォルダン…俺たちは必ずお前を…」ラーンは言葉を噛み締め、拳を握りしめた。イシェは彼の手を軽く叩き、「落ち着いて」と優しく言った。だが、ラーンの心はすでに焦がれていた。