ラーンが石を蹴飛ばすと、イシェの眉間に皺が寄った。「また無駄なエネルギーを使うな。あの遺跡には危険が潜んでいるぞ」
ラーンの豪快な笑い声が、ビレーの賑やかな市場の喧騒に紛れ込む。「大丈夫だって!俺たちが探すのは大穴だぞ!噴火で吹き飛ばされた古代都市の伝説を思い出せ!」
イシェはため息をつきながら、ラーンに背を向け、テルヘルが用意した地図を広げた。地図にはビレー周辺の遺跡と、ヴォルダンとの国境を示す線、そして赤いインクで書かれた「危険区域」が記されていた。「テルヘルは本当にこの遺跡に何か知っているのだろうか…」
テルヘルの指示に従い、彼らは荒れ果てた平原を進む。かつて噴火によって形成された巨大なクレーターの跡地には、今なお熱気を帯びた地面が広がっている。イシェは不安を感じながら、足元を確認しながら進んだ。
「何か感じるか?」ラーンの声が響く。「古代都市の亡霊でもいるんじゃないか?」
イシェは苦笑した。「そんなものはないよ。ただ、この地には何かがあるのは確かだ」
クレーターの縁にたどり着くと、そこには崩れかけた石造りの建物の一部が見えた。かつて壮大な城だったのかもしれない。しかし、今は風化と荒廃で、まるで幽霊城のように静まり返っていた。
「ここが…」テルヘルが地図を指差した。「遺跡の入り口だ」
彼らは慎重に石造りの階段を降りていった。暗い通路は湿り気があり、不気味な沈黙に包まれていた。ラーンは剣を手に取り、イシェは小刀を握りしめた。
突然、壁から異様な音が響き渡った。ラーンの背筋が凍りつくような感覚になった。「何だ?」
イシェの表情も硬くなっていた。「気をつけろ…」
彼らはゆっくりと進みながら、音のする方向へと進んでいった。すると、通路の先に広がる巨大な空間にたどり着いた。そこには、噴火によって溶けた岩が固まった奇妙な造形物が無数に散らばり、まるで地獄絵図のようだった。そして、その中央には、脈動する光を放つ巨大な石碑があった。
「これが…」テルヘルが目を輝かせながら言った。「伝説の遺物だ!」