ラーンの粗雑な剣振りが埃を巻き上げ、イシェの鼻腔をくすぐった。彼女は眉間に皺を寄せながら、咳払いをしてラーンを睨んだ。「もう少し気を使えませんか?遺跡は貴重な遺物で溢れているんです。あのような扱いではいけません」
「ああ、ごめんごめん。でもさ、イシェ。この遺跡、なんか違う感じがしないか?」ラーンは剣を床に立てかけ、壁に目をやると、眉間に皺が寄った。「なんか…重い空気が漂ってるんだよな」
イシェはラーンの視線に従って壁を見つめた。確かに、石畳には何かの文字が刻まれていて、その文字には古びた魔力を感じることができる。彼女は胸の奥底に引っかかるような感覚を噛み締めながら、ゆっくりと頷いた。「…確かに。何かを感じ取ります」
その時、背後から冷たく鋭い声が響き渡った。「感触が面白いですね。この遺跡は、ヴォルダン帝国が長年探し求めていたものかもしれません」
ラーンとイシェは振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の瞳は冷たい炎を燃やし、薄く唇を噛みしめている。その表情からは、何物にも屈しない強い意志を感じ取ることができた。
「ヴォルダン帝国…?」ラーンの顔色が一瞬青ざめた。「あの大国が遺跡を狙っているなんて…」
イシェはテルヘルの視線を避けながら、小さく呟いた。「この遺跡から何かを奪い取ろうとしているのかしら…」
テルヘルは両腕を組んで、静かに言った。「私達にとって、この遺跡はヴォルダンへの復讐を果たすための鍵です。そして、あなたがたにはその鍵の一部となる役割が与えられています」
ラーンの視線がイシェと交わった。彼は噛み締めながら、深く頷いた。「わかった。テルヘルさんの言う通りだ。俺たちは一緒にヴォルダンに立ち向かう」