ラーンが巨大な石の扉をこじ開けようと悪戦苦闘している。イシェは背後でため息をつき、「またか…」と呟いた。 いつも通り、ラーンの計画性のかけらもない行動にイシェは呆れていた。
「ほら、イシェ!見てみろよ、この扉!古代の王が眠っているかもしれないぞ!」
ラーンは興奮気味に扉を叩きながら叫んだ。イシェは目を細めて扉を確かめた。確かに装飾が施され、独特の文様が刻まれていた。しかし、ただの石造りの扉に見えた。
「王様?そんな大層なもんじゃないんじゃないかな」とイシェは冷静に言った。「それに、この扉を開けたら危険な罠が仕掛けられてるかもしれないぞ」
ラーンの耳には届かなかった。彼はすでに扉の隙間をこじ開けようとしていた。その時、背後から声がした。
「無駄だ。あの扉は特殊な鍵でしか開かない」
テルヘルがそう言うと、ラーンは驚いて振り返った。彼女の手には小さな金属製の鍵が握られていた。
「どこで見つけた?」ラーンの顔色が明るくなった。「まさか、あの遺跡の奥深くにあった…」
テルヘルは小さく笑った。「少し調べればわかるだろう。そして、君たちには何も関係ない」
彼女は鍵を扉に差し込み、ゆっくりと回した。石の扉は重々しく音を立てて開いた。内部には漆黒の闇が広がっていた。
ラーンは興奮して一歩踏み出そうとしたが、イシェが彼の腕を引き止めた。
「待て、ラーン。ここは何か変だ」
イシェの声を無視し、ラーンは闇の中へと歩みを進めた。その時、扉の奥から低い笑い声が聞こえてきた。それはまるで、彼らの無謀さを嘲笑うかのような声だった。
イシェは背筋が凍りつくのを感じた。そして、彼女もまた、あの嘲笑を聞き取っていた。