「おい、イシェ、もっと急いでくれよ!こんなの宝探しのペースじゃねえぞ!」ラーンが不機嫌そうに言った。イシェはラーンの後をゆっくりとついていく。懐中電灯の光が壁に影を落とすだけで、遺跡の中は薄暗く、不気味な静けさに包まれていた。
「待てよ、ラーン。ここは慎重に進まないと」イシェは眉間にしわを寄せながら言った。「あの崩れかかった天井見てみろよ。一つでも石が落ちてきたら大怪我だぞ」
「そんなこわごわな話するなよ。大丈夫だって!」ラーンは自信満々に胸を叩いた。しかし、彼の視線は天井の崩れた部分から離さず、少しだけ不安げな表情をしていた。
「お前が言うなら…」イシェはため息をつきながら言った。「でも、もし何かあったら責任とってね」
彼らは遺跡の中を進んでいった。ラーンはいつも通りに先頭を歩いていて、イシェは彼の後を少し離れて慎重に足場を確認しながら進んでいた。テルヘルは二人を見下ろすように、少し遅れて歩いていた。彼女の顔色は険しく、何か考え事をしているようだった。
「あの…」イシェが口を開こうとした瞬間、ラーンが突然立ち止まった。「なんだ?何だ?」イシェとテルヘルが駆け寄ると、ラーンの顔色が青ざめていた。彼の指が震えながら、崩れかけた壁の隙間を指さしていた。「あそこに何かある…像みたいだな…」
イシェも覗き込んだ。「確かに…像のようだが、奇妙な形をしているね」
「よし!これは大物かも!宝箱があるかもしれないぞ!」ラーンは興奮気味に言った。しかし、イシェは不安を感じていた。「待てよ、ラーン。あの像…何か不気味じゃないか?」
「何言ってんだ?そんなの気にすんな!」ラーンの言葉も、イシェの声も、遺跡の中でこだまし、不気味な響きを生み出した。テルヘルが静かに言った。「気をつけろ…」
その時、壁の隙間から、かすかな赤い光が漏れてきた。同時に、崩れかけた天井から石が一つ落ちた。ラーンの足元を少し外れた場所で粉々に砕けた。
「うわっ!」ラーンは驚いて後ろに跳ね返った。「まさか…あの像から光が…」イシェは恐る恐る近づき、赤い光を浴びている像をよく観察した。その奇妙な形状と、不気味な赤い光は、まるで生きているようだった。
その時、イシェとラーンの間で激しい喧嘩が始まった。ラーンは遺跡の宝への執着心、イシェは危険さを訴える。二人の意見は対立し、議論は激化するばかりだった。テルヘルは冷静に状況を観察し、自分の目的のためにこの喧嘩を利用しようと画策していた。
彼らの喧嘩は、遺跡の静寂を破り、不吉な予兆となって響き渡った。