「よし、ここだ！」ラーンが声を張り上げると、イシェはため息をついた。「またか…。」いつも通りのラーンの行き当たりばったりの行動に、イシェは慣れつつあった。だが、今回は少し様子が違った。ラーンの瞳には、普段の軽いBesides遊び心とは違う、何か確信に満ちた光が宿っていた。
「見ろよ、イシェ！この壁の模様…どこかで見たことあるぞ！」ラーンは興奮気味に石壁を指さした。イシェも目を凝らすと、確かに複雑な幾何学模様が刻まれていることに気付いた。それは、数日前、テルヘルが持ち出した古い書物に記されていた遺跡の図面と酷似していた。「もしかして…」イシェの胸が高鳴るのを抑えきれない。
テルヘルは冷静に状況を分析し、「もしこの壁を突破できれば、遺跡の中枢部へ通じる道が開ける可能性がある」と告げた。そして、彼女の鋭い視線はラーンの剣に向けられた。「ラーン、お前には頼みたいことがある。この壁を打ち破れるだけの力があるか？」
ラーンの表情は一変した。彼は深く息を吸い込み、目を閉じると、まるで過去の記憶を呼び起こすようにゆっくりと頷いた。「任せてくれ。」彼の瞳からは、かつてないほどの決意が燃えていた。
ラーンは剣を構え、壁に向かって全力で一撃を放った。轟轟という衝撃と共に、石壁にひびが入る。再び攻撃を加えるラーン。イシェは彼の力強さに圧倒された。そして、テルヘルはどこか嬉しそうに微笑んでいた。
「よし、行こう！」ラーンの声に促され、三人は壁の破片をくぐり抜け、遺跡の中枢部へと進んでいった。そこには、想像を絶する光景が広がっていた。金銀財宝が山積みになっているだけでなく、中央には、かつて見たことのない巨大な宝石が輝いていた。それは、まるで太陽の光を閉じ込めたかのような、眩しいほどの輝きを放ち、周囲を照らしていた。
ラーンの目からは涙が溢れ出していた。「やった…ついに…」彼は興奮を抑えきれず、イシェの手を握りしめた。「我々、大穴を見つけたぞ！」イシェもラーンの喜びを共有し、心から微笑んだ。そして、テルヘルは静かに三人の背後に立っていた。彼女の顔には、深い満足感と、どこか寂しげな表情が浮かんでいた。