ビレーの朝はいつも早かった。ラーンはイシェを起こすために、粗末な戸を思いっきり叩いた。「起きろ!今日も大穴を掘る日だ!」イシェは眠ぼんやりとした目で彼を見つめ、「また遺跡?ラーン、いつまでそんな夢を見るつもりだ?」と呟いた。ラーンの笑顔は、太陽のように眩しかった。「今日は違うぞ!テルヘルが新しい遺跡の情報を持ってきたんだって!きっと今回は大当たりだよ!」
イシェはため息をつきながらベッドから起き上がった。テルヘルの出現は彼らの生活に変化をもたらした。彼女が持ち込む情報はいつも正確で、危険を伴うことが多いものの、高額な報酬と引き換えに彼らを遺跡へと導いてくれるのだ。今日は特に期待感が高かった。
遺跡の入り口に立つと、テルヘルはいつものように冷たい表情で彼らを見下ろしていた。「今回はヴォルダンとの国境に近い場所だ。危険だが、その分大いなる報酬が待っている。」彼女の言葉にラーンの目は輝き、イシェも少しだけ期待を抱いた。
遺跡内部は湿り気が多く、薄暗い光が差し込んでくるだけで、不気味な雰囲気だった。ラーンは剣を構え、イシェは慎重に足元を確認しながら進んでいった。テルヘルは先頭を行き、時折振り返って彼らを牽引するように見せた。
奥深くまで進むと、巨大な石の扉が現れた。扉には複雑な模様が刻まれており、テルヘルは得意げに説明した。「これは古代文明の封印だ。開けば貴重な遺物が見つかるはずだ。」ラーンの胸が高鳴った。イシェも、興奮を抑えきれない様子だった。
扉を開ける鍵となるのは、三人がそれぞれ持っていた小さな石片だった。三人は力を合わせて石片を組み合わせた。すると、扉がゆっくりと開き始めた。その瞬間、彼らは息をのんだ。扉の向こう側には、金や宝石で埋め尽くされた部屋が広がっていた。
「やった!大穴だ!」ラーンの叫び声が、遺跡にこだました。イシェも目を丸くして驚愕した。テルヘルは冷めた表情を崩さず、「よし、計画通りだ。」と呟いた。
三人は喜びのあまり、互いに抱き合った。彼らはついに夢を叶えたのだ。だが、彼らの前に、まだ多くの試練が待ち受けていることを知る由もない。