ラーンがいつものように大げさな声で遺跡の宝について熱く語っていると、イシェはため息をついた。「またあの話か。いつになったら現実的なことを考えるんだ」
「でもイシェ、いつか必ず大穴を見つけるさ!そしたらお前も楽になるぞ!」ラーンの目は輝いていた。イシェは彼の瞳に映る希望の光を見る度に、胸を締め付けられるような感覚になった。ラーンは純粋で真っ直ぐな心の持ち主だった。
「よし、今日はあの未踏の遺跡に行こう!テルヘルも興味を示してたぞ」ラーンの言葉にイシェは頷いた。彼らは小さな町ビレーから少し離れた場所に位置する遺跡に向かった。そこには古代文明の遺物と危険が眠っていた。
遺跡の中を進んでいくと、突然、石壁が崩れ始めた。イシェは咄嗟にラーンを引っ張り、一緒に転がった。目の前には巨大な穴が開き、そこから深い闇が見えた。「これは…!」イシェは声を詰まらせた。
「まさか…」ラーンの顔色も蒼白になった。そこには古代の呪文が刻まれた石碑が倒れ、その下から黒煙が立ち上っていた。
その時、テルヘルが駆けつけ、鋭い眼光で状況を把握した。「これはまずい。この遺跡は危険だ。すぐに撤退しよう!」彼女は冷静に判断し、3人を安全な場所に導いた。
イシェはテルヘルの素早い対応に安堵した。だが、同時に、彼女の中に渦巻く復讐心と冷酷な決意を感じ取ってしまう。そして、その背後には、深い傷と苦しみがあったのではないかと考え始めた。
「あの遺跡の呪文…何か意味があるかもしれない」イシェはラーンに向かって言った。「テルヘルは何かを知っているはずだ。私たちが協力して、彼女の真意を探ってみよう。」
ラーンの顔には決意の色が浮かんだ。「そうだ!あの大穴も、テルヘルの謎も、きっと俺たちで見つけ出すんだ!」彼の言葉に、イシェはわずかな希望を覚えた。彼ら3人の運命は、この遺跡の呪文と深く関わっているように思えた。そして、その先に待ち受ける真実とは一体何なのか。