ビレーの薄暗い酒場の一角で、ラーンは酒を啜りながら、イシェとテルヘルに話しかけた。「おい、あの遺跡、まだ行ってみないのか?」
イシェは眉をひそめた。「またか、ラーン。あの遺跡は危険だって聞いたぞ。以前、調査隊が全滅したって話だ」
ラーンは笑い飛ばした。「そんな話を信じるなよ!きっと大げさに言ってるだけだ。ほら、俺たちが宝を見つけるのは時間の問題だろう?」
テルヘルは静かに酒を啜りながら、ラーンの言葉を聞いていた。彼女はヴォルダンに奪われたものを取り戻すため、遺跡の探査は手段の一つに過ぎなかった。ラーンの無謀さに呆れつつも、彼にはある程度の価値があると感じていた。彼の純粋な熱意は、時には彼女を目的達成へと導くこともあるのだ。
「よし、わかった」とイシェは言った。「今回は俺たちの手で調査してみよう。ただし、危険を感じたらすぐに引き返すぞ」
ラーンは満面の笑みを見せた。「そうだろう!イシェも俺たちについてきてくれるんだな!」
翌日、三人は遺跡へと向かった。廃墟となった石造りの建物に囲まれた広場で、彼らは慎重に足取りを確かめながら進んだ。崩れかけた壁には、謎の文字が刻まれており、かつて栄えた文明の名残を感じさせた。
突然、イシェが声を上げた。「待て!」
彼は地面に落ちている奇妙な石片を見つけていた。「これは…」と彼は目を丸くした。
ラーンは石片を手に取ると、「なんだこれは?」と尋ねた。
テルヘルは石片をじっと見つめた。「これは、ヴォルダンが禁じた古代の遺物だ」と彼女は低い声で言った。「この遺跡には危険な秘密が眠っている可能性がある…」
その時、地響きと共に、遺跡の奥から異様な音が聞こえてきた。ラーンの顔色が変わった。イシェは緊張した表情で剣を構えた。テルヘルは静かに手を持ち上げ、魔法の力を解放し始めた。
三人は互いに頷き合った。彼らは今、未知なる危険に立ち向かう覚悟を決めたのだ。