「よし、今日はあの廃墟だ!」ラーンが目を輝かせた。イシェはため息をついた。「また、あの噂の遺跡か? 結局、大穴なんて見つからないんじゃないのか?」
ラーンの豪快な笑い声はビレーの狭い路地にこだました。「見つけるぞ!いつか必ず、この町を出て、自由になるんだ!」
イシェは彼の背中に手を当てた。「そうだな。でも、その前に今日の仕事だ」
テルヘルが提案した遺跡は、かつて商路の要衝として栄えた場所だった。今は荒れ果てているが、貴重な遺物や資源が残されている可能性があるという。
「あの遺跡は危険らしいぞ。ヴォルダンとエンノル連合の国境付近にあるんだ」イシェは地図を指さしながら言った。「商路が途絶えてから、ヴォルダンの兵士がこっそり侵入してくることもあるらしい」
ラーンは鼻で笑った。「そんなこと怖くないぜ!俺たちに任せておけ!」
遺跡の入り口には崩れかけた石造りの門があった。テルヘルは慎重に扉を開けて中に入った。薄暗い通路は湿気でカビが生え、埃が舞っていた。
「ここなら安全だ」テルヘルが言った。「この遺跡はヴォルダンには知られていないはずだ」
彼らは慎重に遺跡の中を進んでいった。壁には古代の文字が刻まれていて、イシェは興味深そうに観察した。ラーンは飽きっぽい様子で剣を振っていた。
「何かあったぞ!」
ラーンの叫び声に駆けつけたイシェとテルヘルは驚いた。ラーンの足元には、半ば埋もれた宝箱があった。
「大穴だ!」ラーンの声が響き渡った。「ついに、俺たちの大穴だ!」