ラーンの粗雑な斧の振り下ろしが埃を巻き上げた。崩れかけた壁から石ころが転がり落ち、イシェは小さくため息をついた。「また無駄な力仕事だ…」と呟く彼女の言葉を、ラーンは笑顔で遮った。「ほら、イシェ。こんな時こそ俺たちの商機!もしかしたらこの奥に秘宝が隠されているかもしれないぞ!」
イシェは目を細めた。「また大穴の話か?ラーン、遺跡探索の目的は遺物収集であって、夢を語るための場所じゃないんだよ」
「そうかもしれないけど、夢があるからこそ頑張れるんだろ?」ラーンの瞳は輝いていた。イシェはため息をつきながらも、彼の熱意に負けじと、石畳の下を慎重に探り始めた。すると、彼女の指先に冷たい金属が触れた。
「あれ?何かあるぞ」イシェは石を払い除け、そこに埋もれていた小さな金箱を発見した。「これは…」その瞬間、彼女たちの視線は後ろのテルヘルに向いた。テルヘルは静かに箱を持ち上げ、中身を確認した。彼女の表情は硬く、何とも言えない意味深なものだった。
「これは…ヴォルダンが探している物だ」テルヘルの声が震えた。「そして、この遺跡には他にも同じものが隠されている可能性が高い」彼女はラーンとイシェを見据え、「商機とは?」と問いかけた。「それは、我々がこの遺跡から逃げることではなく、ヴォルダンを倒すための武器にすることだ」
ラーンの瞳は驚きと共に闘志で満たされ、イシェの眉間に深い皺が刻まれた。二人は互いに視線を交わし、やがて決意したように頷いた。商機は、夢を語るためだけに存在するものではない。それは、自分たちの未来を切り開くための鍵だったのだ。