ラーンが巨大な石の扉の前で、興奮気味に拳を握り締めた。
「よし、イシェ、テルヘル！準備はいいか？ついにここだ！」
イシェは眉間に皺を寄せながら、扉に刻まれた複雑な模様をじっと見つめていた。「ラーン、本当にここに何かあるのか確信があるのか？あの古い文献には曖昧な記述しか残されていなかったはずだ」
「ああ、でも俺の勘が言うんだ！ここには絶対に何か大物があるって！」
ラーンの言葉にテルヘルは冷笑的な笑みを浮かべた。「勘か。まるで子供みたいだな。だが、いいだろう。この扉を開けば、いずれ真実が明らかになる」
彼女は鋭い目を細め、扉の隙間から差し込む光をじっと見つめた。「そして、我々の運命も変わるだろう」
イシェはテルヘルの言葉に少しだけ背筋が寒くなる感覚を覚えた。テルヘルはいつもそうだった。どこか物事の本質を見抜くような鋭い視線を持つ。そして、その視線には常に、どこか悲しげな影が宿っているように思えた。
ラーンが扉を押すと、重い石の扉がゆっくりと開いた。埃っぽい空気が充満する奥深く、彼らを待っていたのは…広大な地下空間だった。そこには、無数の石柱が整然と並び、中央には巨大な祭壇がそびえ立っていた。
ラーンの興奮は最高潮に達した。「やった！大穴だ！ついに大穴を見つけたぞ！」
イシェは祭壇に刻まれた複雑な模様を注視し、言葉を失った。そして、彼女の心の中で一つの疑問が芽生えた。この遺跡は、単なる財宝を求める者たちのために存在するのか？それとも…何かもっと深い意味を持つ場所なのか？
テルヘルは祭壇に歩み寄り、その表面に手を触れた。「ここはただの遺跡ではない。何か…特別な力が宿っているようだ」
彼女は静かに呟き、ラーンの興奮をよそに、どこか遠くを見つめていた。彼女の目は、まるでこの遺跡の奥底にある、謎めいた真実を探し求めているようだった。
イシェはテルヘルの姿を見て、彼女の中に渦巻く様々な感情を感じ取った。復讐心、そして…どこか孤独な諦念。
イシェ自身も、この遺跡に眠る真実を知りたいという欲求に駆られていた。そして、同時に、自分が何者なのか、何を信じるべきなのか、深く考えさせられるような予感がした。