「おいラーン、あの石柱の隙間、どうだ？」イシェが薄暗い遺跡内部を指差した。ラーンの視線は、埃っぽく光る石畳の上に散らばる破片から、イシェが示す石柱へと移った。「な、何だそれ？ただの石みてえだが」と呟きながら、ラーンは足早にその方向へ歩み寄っていく。
「ただの石じゃないわよ。刻印があるでしょ？もしかしたら古代文字かも」イシェが続けた。「こんなところに刻印なんてあるわけないだろ」ラーンは、石柱の表面を指でなぞりながら言った。しかし、イシェは彼の言葉に耳を傾けず、興奮気味に石柱を一周し始めた。「これぞ、大穴への手がかりかもしれないわ！」
その時、背後から冷たい声が響いた。「本当にそうでしょうか？ただの石柱にそんな価値があるとは思えませんね」振り返ると、テルヘルが鋭い視線で二人を見下ろしていた。彼女の顔には薄ら笑みが浮かんでおり、どこか嘲笑まみれの哄笑のようだった。
ラーンは不快な表情を浮かべ、「なんだって？」と挑発的に返した。「ただの石柱だとしても、探す価値はあるだろう」イシェが冷静に反論すると、テルヘルはさらに深く笑みを広げた。「価値があるかどうかは、その石柱が何を隠しているかにかかっていますわ。もし、あなたが本当に大穴を求めているなら、もっと慎重に調査すべきです」
ラーンの視線が再び石柱に移ると、そこにはイシェが見落としていた細かな模様があった。複雑に絡み合った線刻が、まるで何かの記号のように見える。「おい、イシェ、これ見てみろ！」ラーンは興奮した声で叫んだ。イシェもその模様を見つけ、目を丸くした。「これは…確かに何かを示しているようだ」と呟き、二人は同時に石柱に近づいていった。
テルヘルは二人を見つめながら、静かに言った。「好奇心は時に危険を招きます。くれぐれも注意してくださいね」彼女の言葉には、どこか冷酷な警告が込められていた。ラーンの背筋がゾッとする中、イシェは深く頷き、石柱の調査を始めた。
哄笑のような声が、遺跡の奥底から聞こえてきた気がした。