ビレーの夕暮れ時、空は燃えるような赤色に染まり、ラーンが剣を磨いていた。イシェは彼の様子をじっと見ていた。「またあの遺跡か？」とイシェが尋ねると、ラーンはニヤリと笑った。「ああ、今回は絶対何か見つかる気がするんだ！」
「いつもそう言ってるよ。」イシェはため息をつきながら、地図を広げた。「テルヘルに頼まれたのはあの廃墟の奥深くにある遺物らしい。危険だぞ、ラーン。」
ラーンの笑顔は消えなかった。「大丈夫だ、俺が行くから。イシェも一緒か？」イシェは迷った末に頷いた。
廃墟は、かつて栄えた文明の名残を色濃く残す巨大な建造物だった。崩れた柱や壁からは哀しい風が吹き抜けていた。ラーンとイシェはテルヘルの指示に従い、深い地下へと降りていった。
道中、彼らは幾度となく罠に遭遇し、命の危険を感じた。しかし、ラーンの勇気とイシェの機転によって難を逃れることができた。そしてついに、奥深くに秘められた部屋にたどり着いた。そこには、輝きを失った宝石が散乱し、朽ち果てた祭壇があった。
「これか…」イシェは呟き、宝石の一つを手に取ると、その瞬間、床から冷たい風が吹き上がり、部屋全体を包んだ。
「これは…！」ラーンの顔色が変わった。祭壇に刻まれた紋章が輝き、奇妙な音色とともに部屋の中央に光が降り注いだ。
その時、イシェは背後からの襲撃に気づいた。影が彼らを包み込み、冷たい声が響いた。「待っていたわ…ヴォルダンの犬ども。」それはテルヘルだった。彼女は剣を抜き、ラーンとイシェに向かって襲いかかった。
「裏切り…？なぜ？」ラーンは驚きと怒りで声を震わせた。テルヘルは冷たい目で言った。「私の目的は、お前たちを利用することだけだった。この遺跡から手に入れた遺物こそが、ヴォルダンへの復讐を果たすための鍵なのだ。」
イシェは絶望に打ちひしがれるラーンの姿を見つめた。彼の瞳からは、今まで感じたことのない哀しみが溢れていた。それは、希望を失い、未来への扉を閉ざされた哀歌のようだった。