ラーンの粗雑な剣の扱いが石を落としてしまい、イシェが小さく溜息をついた。埃っぽい遺跡の奥深くで、三人は薄暗い通路を進んでいた。テルヘルは先頭を歩いており、時折振り返り、地図を広げながら進路を確認する。
「ここが最後の部屋だって？期待できるか？」ラーンが興奮気味に尋ねると、イシェは眉間に皺を寄せた。「遺跡の規模から考えると、ここには何かあるはずだ」とテルヘルが答える。「ただ、注意深く行動しなければならない。ヴォルダンの兵士がこの遺跡を探している可能性もある」
彼らの足音が響き渡る静寂の中、ラーンの咳がかすかに聞こえた。イシェは彼の肩を軽く叩き、「大丈夫か？」と尋ねた。ラーンは「ああ、ただの埃だ」と笑いかけたが、咳は続く。テルヘルは少し顔をしかめた。
薄暗い通路の先に広がる部屋にたどり着くと、彼らは息をのんだ。壁一面には古代の文字が刻まれており、中央には光る宝石が埋め込まれた石棺があった。 ラーンは興奮して石棺に近づこうとしたが、イシェが彼の腕を掴んだ。「待て」と彼女は警告を発した。「何か罠があるかもしれない」。
テルヘルは慎重に部屋の中を調べ始めた。彼女の鋭い目で、壁の奥に隠された小さな穴を見つけ出した。そこには細長い筒状のものが仕込まれていた。テルヘルが慎重にそれを取り出すと、それは奇妙な形の鍵だった。
「これは…」イシェが驚いた声で言った。「この遺跡の真の目的はこれなのかもしれない」
ラーンの咳が再び響き渡った。彼は宝石をぎらつかせながら石棺を見つめていたが、顔色は青ざめていた。テルヘルは彼に近づき、心配そうに声をかけてみた。「大丈夫か？」
ラーンはゆっくりと頷いたが、目はどこか遠くを見つめているようだった。イシェが彼の背中に手を当てると、ラーンの体が小さく震えた。