ビレーの tavern の喧騒を背に、ラーンはイシェに肩を叩いた。「今日はいい気分だ。きっと何か掘り出せるぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、「またそんなことを…」と呟いた。だが、ラーンの熱意には抗うことができず、結局はテルヘルと共に遺跡へと向かうことになった。
今回はテルヘルが指定した遺跡だった。彼女はいつもより顔色が悪く、口数も少なかった。
「何かあったのか?」ラーンの問いかけに、テルヘルは僅かに頷く。「ヴォルダンからの情報を得た。私の…復讐の機会が近づいている」
彼女の言葉には、冷酷な決意と同時に、どこか悲しげな響きがあった。イシェはラーンの腕を軽くつかんだ。ラーンの無邪気な笑顔は、彼女にとってかけがえのない希望の光だった。
遺跡の入り口に立つと、不気味な静けさに包まれていた。いつもなら聞こえるはずの鳥のさえずりもない。ラーンが最初に気づいたのは、空気が冷たくなっていることだった。そして、かすかな「呼び声」が耳元で響き始めた。
イシェはラーンの顔色を伺いながら、「何か変だ…」と呟いた。テルヘルは静かに剣を抜いて、周囲を見回した。「気をつけろ。ここには何かがいる」
すると、遺跡の奥から、不気味な光が差し込んできた。その光と共に、奇妙な形の影が動き始めた。ラーンは剣を構え、イシェは後ろに下がるように動き出した。テルヘルは冷静に状況を見極めていた。
「呼び声」は次第に強くなり、三人の心を蝕んでいくようだった。イシェは恐怖で震える足元を見つめた。「何か…逃げないと…」
だが、ラーンは一歩も引かなかった。「逃げない!俺たちは強いぞ!」彼の叫びが、遺跡にこだました。
その時、影がラーンの前に現れた。それは巨大な怪物だった。その目は赤く燃え盛っており、鋭い牙を剥き出しにしていた。そして、その口から「呼び声」が溢れ出していた。
ラーンは剣を振り下ろしたが、怪物には届かなかった。イシェは絶望したように目を閉じた。テルヘルは冷静さを保ちながら、怪物の動きを分析し、隙を狙っていた。
その時、何かが変わった。ラーンの目から赤い光が輝き、彼の体から黒い煙が立ち上った。「呼び声」に飲み込まれたかのような瞬間だった。しかし、ラーンの表情には、今までになかった強い決意が宿っていた。