「おい、イシェ、ここだ！」ラーンが興奮気味に叫んだ。薄暗い遺跡の奥深く、崩れかけた石畳の隙間から、鈍く光る金属片が見えた。イシェは眉をひそめながら近づき、慎重に埃を払い落とした。「これは…銅か？ ラーン、また大げさな話じゃないだろうな」ラーンはニヤリと笑って「今回は違うって！ほら、この模様、見たことあるか？」と、興奮気味に指さした。イシェは確かに、その金属片に刻まれた幾何学的な模様をどこかで見たことがあるような気がした。だが、記憶は曖昧で、思い出せなかった。「よし、持ち帰りましょう！ テルヘルが喜ぶぞ！」ラーンは興奮を抑えきれない様子で、石畳を蹴りながら言った。イシェはため息をつきながら、金属片を拾い上げた。「本当に大穴が見つかるといいな…」と呟いた。
その時、背後から不気味な呻き声が響き渡った。ラーンとイシェは振り返ると、崩れかけた通路の奥から、何者かがゆっくりと姿を現していた。その姿は、人間の形を留めているものの、皮膚は腐敗し、骨がむき出しになっており、目が白濁している。呻き声を上げながら、ゆっくりと二人に近づいてくる。ラーンは剣を抜いた。「なんだこれは…！ イシェ、逃げろ！」イシェは一瞬ためらったが、ラーンの叫び声に恐怖を感じ、すぐに立ち去ることを決めた。しかし、その瞬間、背後から冷たいものが彼女の腕を掴んだ。
「逃げるな…」と、聞き覚えのある声がささやく。イシェは振り返ると、そこにはテルヘルが立っていた。テルヘルの目は血走っており、顔色は蒼白だった。「お前らにはまだ用がある」彼女は冷たく言った。そして、呻き声を上げる生き物に、まるで何の抵抗もないかのように、ゆっくりと歩み寄っていった。