ラーンが巨大な石扉をこじ開けた時、埃っぽい空気が彼らを包み込んだ。イシェは咳き込みながら懐中電灯の光を部屋の奥へと向けると、そこには金色の輝きが広がっていた。
「おお！」
ラーンの声が石室にこだました。宝の山かと思いきや、それは一面に広がる黄金色の穀物だった。イシェは眉間に皺を寄せながら、その穀粒を手にとって確かめた。独特の甘い香りがする。
「これは…？」
「何だかわからなくても食えるものは食うんだ！」ラーンはそう言うと、手を伸ばし、穀粒を口に入れた。
イシェは一瞬ためらったが、ラーンの様子を見て自分も一粒口にした。すると、舌の上で甘い味が広がり、まるで蜂蜜のような香りが鼻腔をくすぐる。今まで食べたことのない、不思議な美味しさだった。
「なんだこれは…」イシェが呟くと、ラーンはニヤリと笑った。
「おいしそうだろ？今日は大穴を開けられたぞ！」
だが、イシェの心には不安が残っていた。この黄金の穀物は一体何なのか。なぜ遺跡に眠っていたのか。そして、その甘い香りは、彼らにどんな未来をもたらすのだろうか。
テルヘルは少し離れた場所で、彼らの様子を冷酷な目で見ていた。彼女は穀物に興味を示さず、その奥にある何かを探していた。彼女の目的は、この遺跡の秘密を暴き、ヴォルダンへの復讐を果たすことだった。そして、この黄金の穀物は、その鍵となるかもしれない。