ビレーの酒場「荒くれ者」の喧騒の中、ラーンはイシェに向かって酒を差し出した。「おい、イシェ、今日は一杯奢るぞ！テルヘルのお陰でまた大金が入ったんだ！」
イシェは苦笑しながらグラスを受け取った。「ラーン、いつも通り大盤振る舞いだね。でも、あの遺跡の呪言が解けなかったのは残念だったな。」
「ああ、確かにね。あの奇妙な石板には何か書かれてたよな？まるで呪文みたいで…」ラーンの顔色が少し曇り、イシェは彼の様子をじっと見つめた。
「気にしない方がいいよ、ラーン。呪言なんてただの迷信だ。」とイシェが言うと、ラーンはいつもの明るい笑顔を取り戻した。
「そうだろ！俺たちは遺跡探検者だ！呪言なんか怖くない！」彼は立ち上がり、テーブルを叩いた。「よし、今日は祝杯だ！次の目標はどこにするか話そうぜ！」
イシェはラーンの熱気に押されながらも、どこか落ち着かない気持ちを抱えていた。あの石板に刻まれた奇妙な文字列は、単なる呪言ではなかったような気がしたのだ。
その頃、テルヘルはビレーの街はずれの宿屋の一室で地図を広げ、何かを考え込んでいた。
「ヴォルダン…いつか必ず復讐を果たす。」彼女はつぶやくように呟いた。あの遺跡の呪言も、ヴォルダンの陰謀の一部に違いない。彼女は真実を解き明かし、ヴォルダンへの復讐を果たすため、ラーンとイシェを利用し続けるつもりだった。
夜が更け、ビレーの街は静寂に包まれた。しかし、荒くれ者の裏では、ラーンが泥酔して寝ている間に、イシェがテルヘルに言葉をかけようとしていた。
「テルヘルさん、あの遺跡の呪言…何か知ってるんですか？」とイシェは尋ねた。テルヘルは少し考えてから、ゆっくりと口を開いた。「私は…ヴォルダンの過去の記録を調べているんだ。あの呪言は…」彼女は言葉を濁し、イシェに真実を告げなかった。
「あなたは一体何を知っているの？！」イシェは困惑しながら問いかけたが、テルヘルは答えなかった。彼女の瞳には、復讐への執念と、深い闇を感じさせるものがあった。