ラーンが興奮気味に遺跡の入り口を指さすと、イシェはいつものように眉間に皺を寄せた。「また行き当たりばったりか？」彼女の言葉にラーンは元気よく笑った。「今回は違うぞ！あの石碑には古代文字で何か書かれてるんだ！」
確かに、石碑にはかすれた文字が刻まれていた。テルヘルは冷静にその様子を見つめ、「古い言語だ。だが、私の知る限りではヴォルダンの軍がかつてこの地に侵攻した際に持ち去った遺物と同じ模様のものがある」と告げた。
「ヴォルダン？」ラーンの表情が曇った。「まさか、あの遺跡がヴォルダンのものだったのか…」イシェは彼の肩を叩き、「落ち着いて。まだ何とも言えないよ」と冷静さを保とうとした。だが、内心では不安を感じていた。ヴォルダンとの関わりは避けたいものだ。
テルヘルは「この遺跡には何か隠されているはずだ。ヴォルダンの軍が持ち去った遺物と関連がある可能性が高い」と続けた。「もし、それが真実であれば…」彼女は言葉を濁した。ラーンは興奮気味に、「さあ、イシェ！大穴が見つかるかもな！」と彼女の手を引っ張ろうとしたが、イシェは彼の腕を振りほどき、「ちょっと待てよ！落ち着いて考えようよ」と制止した。
テルヘルの言葉は、彼らにとって予期せぬ展開をもたらす可能性があった。そして、それは単なる遺跡探索を超えた何かになりそうな予感を、彼らの心に影を落とすのだった。イシェはラーンの目をじっと見つめた。「本当に大穴が見つかるかもしれない…でも、それ以上に危険なこともあるかもしれない」と告げた。
ラーンはしばらく沈黙した後、「わかった、イシェ。今回は慎重に進もう」と頷いた。だが、彼の瞳にはまだ冒険心と興奮が宿っていた。イシェは彼の様子を見て、呆然とした。彼を止められない自分が怖かった。