「おい、ラーン！本当にここなのか？また迷ったな！」イシェが眉間に皺を寄せて言った。ラーンの後ろをついていくのはいつも大変だった。彼の鼻はまるでコンパスのように、遺跡の入り口を示すかと思いきや、ただの茂みの中に飛び込んでいくこともあった。
「大丈夫だ、イシェ！ほら、あの石碑に刻まれた記号、見たことあるだろ？あの遺跡の地図に載ってたやつだよ！」ラーンは自信満々に言ったが、イシェは彼の指さす石碑を疑いの目で見ていた。確かに記号は似ているが、石碑自体が崩れかけていて、記号も半分消えかかっている。「そんな…」とイシェが口を開こうとした瞬間、ラーンの足元が崩れ、彼は転げ落ちていった。
「うわっ！」ラーンが叫んだ声と共に、土埃が舞い上がった。イシェは慌てて駆け寄ると、ラーンの顔から血が流れているのを発見した。「ラーン！大丈夫か！？ 」イシェの焦りにも関わらず、ラーンは苦笑いしながら言った。「大丈夫だ、イシェ。ちょっと転んだだけさ。それにほら！」ラーンは地面に落ちている何かを指差した。
それは小さな金色の箱だった。イシェが箱を開けると、そこには輝く宝石がぎっしり詰まっていた。ラーンの目からは興奮の光が溢れ、イシェも思わず息をのんだ。「やった！大穴だ！」ラーンは叫び、イシェに抱きついた。「これで僕らは自由になれる！もう遺跡なんて探索しなくてもいいんだ！」
イシェはラーンの喜びを分かちながらも、どこか複雑な気持ちだった。宝石は確かに素晴らしいが、本当にこれで自由になれるのか？ラーンの行動力は時に無謀で、計画性も皆無だ。いつか彼を危険な目に遭わせてしまうのではないかと、いつも不安を感じていた。
「よし！この宝で新しい生活を始めよう！」ラーンは目を輝かせながら言った。イシェは小さくため息をつき、彼の後を続けた。
「ああ、やっぱり…」イシェはそう思った。「あの呆けが、いつまでたっても何も変わらない」