ラーンが凍てつく風を切って遺跡の入り口に立っていると、イシェが後ろから追いついた。
「また遅刻か。お前は一体いつになったら時間に厳つくなるんだ。」
イシェの冷たい視線を感じながら、ラーンは苦笑いした。「ごめんごめん、イシェ。ほら、今日はきっと大穴が見つかる予感がするんだ!」
イシェは眉をひそめた。「そんな甘い話があるわけないだろう。それに、今日の天気を見ろ。この吹雪が止む気配はないぞ。」
確かに、空には鉛色の雲が広がり、冷たい風が容赦なく吹き付けている。視界は白く霞んでいて、遠くの山々もかすかにしか見えない。それでもラーンは意に介さず、遺跡へと続く石畳を力強く踏み出した。
「ほら、テルヘルさん待ってるぞ!」
テルヘルは、彼らに雇われた謎の女性だ。ヴォルダンへの復讐を誓うというその目的は、ラーンとイシェにはよく分からなかった。しかし、高額の日当と遺跡の調査補助を約束した彼女の申し出を、彼らは断る理由を見いだせなかったのだ。
テルヘルは、吹雪の中にも関わらず薄手の黒装束を身にまとい、鋭い眼光で周囲を警戒していた。氷のように冷たい空気を切り裂くように、「準備はいいか?」と尋ねた。ラーンとイシェは頷き、テルヘルに続いて遺跡へと足を踏み入れた。
遺跡の内部は、外とは異なり、不気味な静けさに包まれていた。厚い埃が積もり、床には苔が生え、壁には崩れかけた石造りの彫刻が見えた。ラーンは懐中電灯を点けて、周囲を照らした。しかし、その光は吹雪の外の世界とは異なり、遺跡の奥底に潜む暗闇を完全に払いのけることはできなかった。
「ここには何かがあるはずだ。」テルヘルはそう呟きながら、遺跡の中心へと向かった。ラーンの直感も、彼女と同じことを言っているようだった。
彼らは遺跡の奥深くへと進んでいったが、道中、何かに怯えるようなイシェの姿が目に入ったり、吹雪の音だけが聞こえる静寂に不気味さを感じたりする場面もあった。そして、ついに彼らは遺跡の中心部にたどり着いた。そこには、巨大な石棺が安置されていた。
「これこそが、我々が探していたもの。」テルヘルは石棺に向かって言った。「ここには、ヴォルダンを滅ぼすための鍵があるはずだ。」
ラーンとイシェは息を呑んだ。彼らは、この遺跡に眠る秘密の真実に直面したのだ。そして、吹雪のように激しい嵐が吹き荒れる中、彼らは運命に導かれるように、石棺へと近づいていった。