「よし、今日はあの崩れかけた塔だな」ラーンが豪快に笑うと、イシェは眉間にしわを寄せた。「また、そんな危険な場所？」ラーンの無鉄砲さにイシェはいつも頭を抱えていた。
「危険？そんなもん、俺の剣があれば怖くないぜ！」ラーンは胸を張った。彼の目は輝いていたが、イシェにはどこか不自然に感じた。
「あの塔は噂で言うように呪われているって聞いたんだけど…」イシェは不安げに言った。「それに、テルヘルさんの依頼状にも、特に指定はなかったはずなのに…」
ラーンの顔色が少し曇る。「そうだな…でも、俺には何かを感じたんだ。あそこで何かが見つかるって…」彼の目は再び輝きを取り戻し、イシェの心を揺さぶった。「お前も知ってるだろ？俺がいつか大穴を掘り当てると！」
「ああ…」イシェはため息をついた。ラーンの熱意にはいつも負けてしまう。しかし、今回は何かが違う気がした。ラーンの言葉の裏に、何か隠されたものがあるような気がしてならない。
テルヘルは、いつものように冷静な表情で二人を見下ろしていた。「準備はいいか？」彼女の鋭い視線は二人の動きを捉えていた。「あの塔には危険が潜んでいる。油断するな」
イシェはテルヘルの言葉に背筋が凍りつくほどの寒気を覚えた。彼女はいつも冷静沈着だが、今回は少し様子が違った。まるで何かを知っているかのような、不気味な自信を感じた。
三人は塔へと向かった。崩れかけた石畳の上を慎重に進むと、冷たい風が吹き荒れた。ラーンは剣を手にし、イシェは懐から小さな光源を取り出した。テルヘルは二人を見据えながら、後ろを歩く。
塔の中は暗く、埃っぽい空気が漂っていた。壁には奇妙な模様が刻まれており、不気味な影が揺らめいていた。ラーンの足音が響き渡り、イシェの心臓は高鳴った。何かがおかしい。
「ここだ」ラーンが突然立ち止まった。「俺には、何かがあるって感じるんだ」彼の目は輝いていて、狂気に満ちていた。イシェは不安と恐怖でいっぱいになった。
ラーンが石をどけると、そこには小さな扉があった。彼は扉を開けようとした時、テルヘルが彼を制した。「待て！」彼女の目は鋭く光っていた。「何かがおかしい」
その時、塔の奥深くから不気味な音が響き渡った。それはまるで、獣の咆哮のようだった。ラーンの顔色が青ざめた。イシェは恐怖で言葉を失った。
「これは…罠だ」テルヘルは冷たく言った。彼女の言葉に、ラーンとイシェは背筋を凍りつかせた。