ラーンが剣を片手に遺跡の入り口に立ち尽くしていると、イシェが後ろから肩を叩いた。「準備はいいか？今回はテルヘルさんの言う通り、慎重に行こうぜ」
ラーンの眉間にしわを寄せながら、「わかったわかった。でもさ、いつも『慎重に』って言うけど、結局は俺たちが危険な目に遭うんだろ？」とぼやいた。イシェはため息をつき、遺跡へと続く階段を降り始めた。「まあ、今回は違うかもしれないよ。テルヘルさんがあの『名家』の遺物について調べてたみたいだし」
「名家」の遺物。それはかつてこの地に栄えた一族が遺したとされる貴重な品々で、その価値は計り知れないと言われている。
テルヘルは遺跡の奥深くにある部屋へと3人を導いた。「ここだ。この壁には何か刻まれてるはずだ」と彼女は言った。ラーンが壁を指さすように「ここに何かあるぞ」と叫んだ時、イシェは彼の背後からゆっくりと手を伸ばし、壁に触れた。すると壁の一部が沈み込み、奥の部屋へと続く通路が現れた。
「これは…！」イシェは息をのんだ。「まさかこんな場所に…」
通路の先には、かつての名家の栄華を物語る豪華な部屋が広がっていた。壁には美しい壁画が飾られ、床には貴重な宝石が散りばめられている。部屋の奥には、黄金でできた宝箱が鎮座していた。
「よし、これで大穴だ！」ラーンが興奮気味に宝箱を開こうとした時、テルヘルは彼の腕を掴んだ。「待て！まだだ」と彼女は冷静に言った。「この遺跡には罠が仕掛けられている可能性もある。慎重に進めなければ…」
その時、部屋の天井から黒い影が降りかかってきた。ラーンの剣が光り、影を斬り裂いたが、それはただの幻影だった。その瞬間、床が崩れ、ラーンは深い穴に落ちていった。「ラーーン！」イシェとテルヘルが駆け寄ろうとしたその時、再び影が襲いかかる。
イシェは素早くテルヘルの腕をつかみ、部屋の隅にある隠し通路へと逃げ込んだ。
「あの影は一体何だ？」イシェは息を切らしながら尋ねた。「ヴォルダンからの刺客か？」
テルヘルは顔を歪めた。「そんなことはありえない。あの影…何か違う。まるで…」彼女は言葉を濁すように言った。「まるで、この遺跡を守っているかのようだ」