ラーンの大雑把な剣の一振りで、石扉が崩れ落ちた。埃っぽい空気が流れ込み、イシェは咳き込んだ。「また無茶するんじゃないわよ、ラーン。」「はは、気にすんなよ、イシェ。ほら、見てみろこの壁画！」ラーンは興奮気味に壁画を指さした。鮮やかな色彩で描かれたのは、翼を持つ人々が空を舞う様子だった。「一体何者なんだ…」イシェは呟いた。
その時、背後から冷たく声が響いた。「興味深い発見ですね。」テルヘルが鋭い目で壁画を見つめていた。「この遺跡には何か隠されているはずです。我々を導いてくれるでしょう。」ラーンの無邪気な探求心とは異なり、テルヘルの目は執念に燃えていた。彼女はヴォルダンに奪われた故郷を思い出し、胸を締め付けられる痛みを感じた。
「よし、では進もう！」ラーンは剣を構え、遺跡の奥へと進んでいった。イシェはテルヘルの顔色を伺いながら、彼らについていくことにした。
遺跡の奥深くには、巨大な祭壇があった。祭壇の上には、光り輝く球体が置かれていた。ラーンが近づこうとすると、テルヘルが彼の腕を掴んだ。「待ちなさい。」彼女は目を細めて球体を見つめた。「これはただの遺物ではない。我々の同胞が残したメッセージなのかもしれない…」
「同胞？」イシェは戸惑った。ラーンも首を傾げた。テルヘルは深く息を吸い、ゆっくりと口を開いた。「この遺跡は、かつてヴォルダンに滅ぼされた国のものなのです。」
その言葉に、ラーンとイシェは息を呑んだ。彼らは、自分が巻き込まれた事件の深淵を垣間見た気がした。