「よし、今日はあの遺跡だな」ラーンが、イシェの持ってきた地図を広げながら言った。イシェは眉間に皺を寄せていた。「また危険な場所かい？ ラーン、あの辺りはヴォルダンとの国境に近いんだぞ。何かあったら大変だ」
ラーンは軽く笑い、「大丈夫だよ、イシェ。俺たちにはテルヘルがいるじゃないか」と胸を叩く。「それに、今回は大物が見つかる気がするんだ！」
テルヘルは冷静に言った。「情報によると、あの遺跡にはかつての同盟国の王が眠っていると噂されている。遺物はもちろん、彼の墓所には貴重な知識が残されているかもしれない」
イシェは少し安心した表情を見せた。「そうか、同盟国のものなら、ヴォルダンも手出しできないかもな…」
ビレーから遺跡までは数日かかる。三人は荷物をまとめ、街を出発した。道中、ラーンはいつも通り陽気に歌い、イシェは地図を片手に周囲を警戒し、テルヘルは沈黙を守りながら時折鋭い視線で周囲を睨んでいた。
遺跡の入り口は崩れかけの石門だった。ラーンの力強い一撃で門は粉々に砕け散った。
「よし、行こう！」ラーンが先頭に立って遺跡内部へ踏み入れた。
暗い通路を進んでいくと、壁には古代文字が刻まれていた。「これは…同盟国の文字だ」イシェが読み上げながら言った。「この遺跡は本当に同盟国のもので間違いないようだ」
奥へと進むにつれ、遺跡の雰囲気が重くなっていった。冷たい空気が流れ、何かの気配を感じたイシェは背筋を凍らせた。
その時、突然、地面が揺れた。天井から石が崩落し、ラーンは咄嗟にイシェを庇いながら転倒した。
「なんだこれは…！」ラーンの叫びが響き渡った。
埃が晴れると、目の前に巨大な扉が現れていた。扉には同盟国の紋章が刻まれており、その中心には宝石が輝くように埋め込まれている。
「これだ…王の墓だ！」テルヘルが興奮気味に言った。「この遺跡はヴォルダンに奪われなければ…」
その時、背後から声が響き渡った。「なかなか面白い遺跡を見つけたようだな」
振り返ると、そこにヴォルダンの兵士たちが立っていた。リーダーは鋭い眼光で三人に迫る。「同盟国の遺産は我々が守る。お前たちは立ち去れ！」