ラーンの大斧が岩壁を切り裂き、埃が立ち込める中、イシェは薄暗い通路を慎重に進む。
「ここだな。」テルヘルが声にならないほど低い声で言った。壁一面に描かれた、複雑な幾何学模様の壁画を指さす。
「また古代人の迷宮か…」ラーンがため息をついた。「一体何を探してるんだ?」
「この遺跡はヴォルダン軍に占領された。」テルヘルの目は冷酷に光る。「彼らが何かを隠している。そして、それが我々の復讐の鍵になる。」
イシェは壁画の詳細を注意深く観察した。複雑な模様の中に、わずかに異なる色合いの線が刻まれていることに気がついた。まるで、誰かが意図的に記したように。
「これ…何かメッセージ?」
テルヘルが頷きながら、小さな銀の道具を取り出す。それは、イシェがかつて見かけた、ヴォルダン軍の将校が持っていたものと同じデザインだった。同期か…?彼女は一瞬、混乱する。
「この道具は、古代の言語を解読できる。」テルヘルは説明した。「壁画に隠されたメッセージを解き明かせば、ヴォルダンの秘密を知る鍵になる。」
ラーンは不快な表情をした。「また謎めいた話か…」彼は壁画を叩きつけた。「早く宝物を掘り出したいんだ!」
イシェはテルヘルに鋭い視線を向ける。彼女は何かを隠している気がした。この遺跡、そしてヴォルダンへの復讐…全てが複雑に絡み合っている。そして、イシェ自身もその渦の中に巻き込まれていくのを感じる。