「準備はいいか?」テルヘルが鋭い視線でラーンとイシェを見据えた。二人は互いに頷き、懐から小さなランプを取り出した。薄暗い遺跡の入り口に差し込む朝日が、埃埃を舞い上げながら、彼らを飲み込んだ。
「よし、始めよう」
テルヘルが先頭を切って、崩れかけた石畳の上を進んでいった。ラーンの足音は重く、イシェは静かに、しかし確実に後ろをついていく。遺跡の内部はひんやりと冷たく、湿った空気中にカビ臭さが漂っていた。壁には、何世紀も前に描かれたと思われる、奇妙な記号が刻まれていた。
「ここだな」テルヘルが突然立ち止まり、壁の一角を指差した。「司祭が眠ると言われている場所だ」
ラーンの顔色が変わった。「司祭?あの伝説の?」
イシェは冷静に尋ねた。「何のために司祭の墓を?」
テルヘルは冷たい笑みを浮かべた。「司祭の墓には、強力な遺物があると噂されている。それが我々の目的だ」
彼らは慎重に石畳を進み、奥へと進んでいく。道中、ラーンが崩れかけた天井から落ちかかった石柱を必死に支え、イシェは罠を仕掛けてある可能性に常に気を配りながら進んだ。
やがて、広間の入り口にたどり着いた。そこには、巨大な石棺が置かれており、その周りを幾つもの石像が取り囲んでいた。石棺の上には、精巧に彫られた司祭の姿が刻まれていた。
「これが司祭の墓か」ラーンが息を呑んだ。
テルヘルは頷き、「遺物は必ずここに存在するはずだ」とつぶやいた。
イシェは慎重に石棺に近づき、表面を触れた。「何か、奇妙なエネルギーを感じる…」
その時、石棺から不気味な光が放たれ、部屋全体を照らした。石像の目が赤く光り始め、壁に描かれた記号が動き出した。
ラーンの顔色が青ざめた。「これは…!」
イシェは慌てて叫んだ「何かが起こっている!逃げろ!」
三人は慌てて石棺から離れようとしたが、足元が崩れ始めた。石棺の周囲を囲む石像たちが動き始め、彼らに向かって襲いかかってきた。
「Damn it…」テルヘルは剣を抜いて石像に立ち向かった。ラーンも剣を構え、イシェは素早い動きで石像をかわしながら逃げ出した。
遺跡は、司祭の怒りに満ちた光と、彼らの絶叫で満たされていく。