ラーンの大斧が石壁を砕き、埃が舞った。
「よし、これで通れるぞ!」
ラーンは得意げに笑うが、イシェは眉間に皺を寄せた。
「遺跡の奥へ進む前に、この部屋をよく探した方が…」
「いいって!大穴が見つかるのは時間の問題だ」
ラーンの言葉は自信にあふれていたが、イシェには不安が募るばかりだった。彼らはテルヘルに雇われて、ヴォルダンとの国境付近にある遺跡を探検していた。テルヘルは遺跡の奥深くにあると噂される「召喚の石版」を求めているようだが、その目的を詳しく教えることはなかった。
「ここには何もないぞ!」
ラーンが不機嫌そうに言った。イシェは彼の背後から壁に刻まれた複雑な模様を見つけた。
「ラーン、あの模様を見てみろ」
イシェの指さす方向を見たラーンの顔色が変わった。それは彼らが今まで見たことのない、複雑で精巧な古代文字だった。
「これは…?」
その時、床の真ん中から光が湧き上がり、部屋全体を赤く染めた。ラーンとイシェは驚愕して後ずさった。光の中からは、巨大な影がゆっくりと立ち上がった。それは人間の形をしたものではなかった。何本もの角が生え、鱗で覆われた体、鋭い爪を持つ恐ろしい姿だった。
「これは…!」
テルヘルが駆けつけてきた。彼女の表情は冷酷に笑みを浮かべていた。
「召喚成功だ」
ラーンの顔色が青ざめた。イシェも恐怖を感じながらも、テルヘルの言葉に疑問を抱いていた。なぜ彼女は召喚したのか?そして、この怪物は何を目的にするのか?