「おい、イシェ、この奇妙な模様、見たことあるか？」ラーンが指さす壁画には、幾何学的な図形が複雑に絡み合っていた。イシェは眉間に皺を寄せながら、懐から小さな石板を取り出した。「確か…古い文献で見たような…古代ヴォルダン語の刻印に似ているかも」
「ヴォルダン語？」ラーンの顔色が変わった。「まさか、ここがヴォルダンの遺跡じゃないよな？そんなはずないだろう…」
テルヘルは冷徹な目で壁画を睨んでいた。「可能性はある。この遺跡の場所、歴史を考えると…」。彼女はラーンに目を向け、「念のため確認しておこう。お前たちにはヴォルダンとの関わりはないだろう？」
「何言ってんだ？俺たちはビレーで生まれ育ったんだぞ。ヴォルダンなんて…」ラーンの言葉は途切れ、イシェが彼の手を軽く掴んだ。「落ち着いて」。イシェはテルヘルに視線を向け、「私たちは遺跡探索者です。ヴォルダンとは無関係です」と冷静に答えた。
「そうか…」。テルヘルは少しだけ眉を和らげ、壁画を指差した。「この刻印がヴォルダン語だとしたら、この遺跡には何か危険な秘密が隠されている可能性がある。注意深く進もう」
三人は慎重に進むにつれ、遺跡の奥深くに進むにつれて、空気が重く淀んできたように感じた。ラーンはイシェの手を握りしめ、テルヘルは常に剣を構えたままだった。静寂の中、かすかな音が聞こえてきた。それはまるで、遠くで誰かが囁いているような音だった。
「何か聞こえる…？」イシェが不安そうに言った。
ラーンの耳もその音をつかんだ。「ああ…」
テルヘルは鋭い眼差しで周囲を見渡した。「何者かの気配を感じる…」。彼女は口を開こうとしたその時、壁の奥深くから、不気味な光が放たれた。その光はゆっくりと広がり、三人に迫り来るように輝き始めた。ラーンは恐怖を感じながら、イシェの手を強く握り返した。
「逃げろ！」テルヘルが叫んだ。しかし、その瞬間、光は爆発し、三人は blinding light に飲み込まれた。
そして、意識を取り戻したとき、彼らは全く違う場所にいた。そこは、広大な砂漠だった。灼熱の太陽が容赦なく照りつける中、遠くには蜃気楼のような影が揺らめいていた。
ラーンは立ち尽くし、目を丸くした。「ここは…どこだ？」
イシェも困惑しながら、周囲を見渡した。「まさか…ヴォルダンなのか…」
テルヘルは静かに、口を開いた。「どうやら、我々はヴォルダンの策略にはまり、別の世界に飛ばされてしまったようだ」