ビレーの薄暗い酒場で、ラーンが豪快に笑いながら酒を煽っていた。イシェは眉間に皺を寄せ、彼の肩を軽く叩いた。
「また無駄な金を使ったな。あの剣、本当に必要だったのか?」
「まあ、いつか役に立つ時もあるだろう!」
ラーンはそう言って、剣をテーブルに打ちつけた。その音で酒が波打った。イシェはため息をつき、視線をテルヘルに向けた。彼女はいつも通り、静かに酒を飲んでいた。
「テルヘルさん、次の遺跡はいつ行くんですか?」
テルヘルはゆっくりと顔を上げ、冷たい目でイシェを見据えた。
「準備は整っている。明日、明け方に出発だ。」
ラーンが嬉しそうに声をあげた。
「よし!ついにあの遺跡に挑める!」
イシェは不安を感じながらも、テルヘルの言葉に耳を傾けた。彼女はいつも冷静で、目的を明確に持っていた。イシェは彼女の行動には何か秘密があると疑っていたが、それを確かめる術はなかった。
次の日、三人はビレーから離れた山間の遺跡へと向かった。道中、ラーンはいつものように軽口を叩き、イシェは彼の無鉄砲さに呆れていた。テルヘルは黙々と前に進み、時折地図を広げて確認していた。遺跡の入り口に到着すると、ラーンの興奮が最高潮に達した。
「ついに来たぞ!大穴が見つかるのは今日だ!」
イシェはラーンの背後から、彼の肩を軽く押さえつけた。
「落ち着きなよ。まずは周囲を確認だ。」
テルヘルは遺跡の入り口を見つめ、何かを考え込んでいるようだった。彼女は口を開き、かすれた声で言った。
「この遺跡には、何か危険が潜んでいる気がする…」