ビレーの酒場にはいつもより騒がしい。テーブルの上には空の樽と割れた酒杯が散らばり、泥酔した男たちの笑い声が響いていた。ラーンはイシェに肩を叩き、「おい、聞いてるか?あの遺跡からまた珍しい遺物が出たんだってな。金貨でいっぱい詰まった箱だったらしいぞ!」
イシェは眉間に皺を寄せながら、「またか…そんな噂ばかりじゃ何も始まらないよ。それに、あれは口伝だけで本当かどうかすら分からないだろう」と冷静に言った。ラーンの楽観的な性格とは対照的に、イシェは現実主義者で、口伝えの噂話には懐疑的だった。
「でも、いつか本当に大穴を掘り当てる日が来るかもしれないだろ?ほら、あのテルヘルだって、僕たちを雇って遺跡探検に誘ってきたんだろ?」ラーンの目は輝き、興奮気味に言った。
イシェはため息をつきながら、「あの女性は、ヴォルダンとの復讐のために遺跡を探しているらしいよ。僕たちを雇っているのは、単なる都合の良い道具だ」と冷静に指摘した。
「そうかもしれない…でも、僕たちが何かを見つけることで、彼女が目標を達成できる可能性もあるだろう?それに、僕たちはテルヘルのおかげで高額な報酬を得られるんだぞ!」ラーンは楽観的に言った。
イシェはラーンの言葉を聞いても、心は晴れなかった。テルヘルの目的は復讐であり、彼らを道具として利用していることは明らかだった。しかし、イシェ自身も、いつか大穴を掘り当てて、この貧しい生活から抜け出したいという夢を抱いていた。
「よし、次の遺跡探検はいつ行くんだ?」ラーンが熱心に尋ねると、イシェはため息をつきながら、「まだ決まってないよ…でも、テルヘルから連絡があればすぐに準備するだろう」と答えた。
二人は互いに言葉を交わさず、酒を飲み続けた。ビレーの酒場で流れる噂話に耳を傾け、自分たちの未来をぼんやりと考えていた。