ビレーの酒場はいつも賑やかだった。ラーンがイシェと肩を並べてカウンターに腰掛けると、マスターがいつものように「お帰りなさい」と笑いかけた。ラーンの顔を見て、マスターは眉をひそめた。「また遺跡に行ってきたのかい?今回は何か見つかったか?」
ラーンは苦笑しながら、空になったタンブラーをテーブルに置いた。「いや、相変わらず何もないよ。イシェがいつも言うように、俺の運は本当に悪いのかもな」。
イシェは小さくため息をつき、「もっと現実的な目標を持つべきだよ、ラーン。遺跡探検なんて、宝にたどり着けるのはほんの一握りの人だけだ」と諭す。
ラーンの顔色が一瞬曇ったが、すぐにいつもの陽気な表情を取り戻した。「でも、いつか必ず大穴を掘り当ててやるんだ!ビレーの伝説になるような大穴を!」
イシェは彼の熱意に目を細めた。ラーンには、口伝で伝え聞く古代の英雄のような光るものがあった。しかし、その光は、現実の世界ではなかなか輝きを放たない。
その時、店先に影が落ちた。背の高い女性が、静かに店内へ入ってきた。黒曜石のように輝く髪を後ろで結んだ彼女は、鋭い眼光で周囲を見回し、カウンターに近づいてくる。
「ラーン、イシェか?」彼女の声音は冷たく、しかし力強い。「準備はいいか?今日は大きな遺跡に行く。危険な場所だが、その分報酬も大きいぞ」
ラーンの目は輝き、イシェは眉間に皺を寄せた。女性の言葉に、二人は何かを感じ取った。それは、単なる遺跡探検ではないような予感だった。