「よし、今回はあの崩れかけた塔だ!」
ラーンの声はいつも通り、元気いっぱいで、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またも、そんな危険な場所?」
「大丈夫だって!ほら、テルヘルさんもいるじゃないか」
ラーンはそう言って、テルヘルの鋭い視線に目をそらした。彼女は冷静に地図を広げ、塔の構造を分析していた。
「確かに、あの塔には未調査の部分が多い。しかし、危険度も高い。特に地下迷宮への入り口については、慎重な対策が必要だ」
イシェはテルヘルの言葉に安心感を覚えたが、ラーンの様子からして、彼女の意見はあまり耳に入っていないようだ。彼はいつも、大穴を夢見ていた。だが、イシェは現実を見つめていた。遺跡探索で稼いだ金は、日々の生活費を賄うのにやっとのことで、大穴などという夢は遠い話だった。
「よし、準備はいいか?じゃあ行くぞ!」
ラーンの口上と共に、3人は崩れかけた塔へと足を踏み入れた。