ビレーの薄暗い酒場の一室。ラーンが豪快に笑うと、イシェは眉間にしわを寄せていた。テーブルの上には空になった酒樽と、テルヘルが残した銀貨の山があった。
「また失敗か?」イシェの言葉は冷たかった。「あの遺跡、お前が言うような大穴なんてあったわけがないだろう」
ラーンの笑顔は消え、不機嫌そうにテーブルを叩いた。「いや、今回は違う!あの壁に刻まれてた記号を見たか?あれは明らかに古代文明の秘宝を示すものだ。あと少しで…」
「あと少し?」イシェはため息をついた。「いつも『あと少し』ばかり言ってる。いつになったら現実を見るんだ」
ラーンの視線がテルヘルが座っていた席に落ちた。彼女はすでに姿を消し、残された銀貨の山だけが沈黙を保っていた。
「あの女…」ラーンは呟くように言った。「一体何を企んでるんだろうな」
イシェは何も言わず、ただ空になった酒樽を見つめていた。彼らの前に広がる未来は、依然として霧の中に包まれていた。
翌日、ビレーの市場で騒ぎが起こった。大勢の人が集まり、興奮気味に何かを話している。ラーンとイシェも好奇心に駆られて群衆の中へ飛び込んだ。
「なんだって?」ラーンの顔が明るくなった。「あの遺跡から、大量の古代兵器が出土したらしいぞ!」
イシェは眉をひそめた。「古代兵器…?まさか…」
その時、背後から冷たく声が聞こえた。「お二人とも、ご苦労様でした」
ラーンとイシェが振り返ると、テルヘルが立っていた。彼女の手には、輝く剣が握られていた。