「よし、ここだ!」
ラーンが興奮気味に叫び、石畳の上の歪んだ紋様を指さす。イシェは眉間に皺を寄せた。
「またか? ラーン、あの紋様はただの劣化だよ。遺跡を示すものではない」
「いやいや、今回は違うって! この紋様、今まで見たことない形なんだよ!」
ラーンの熱意に押され、イシェも仕方なく頷いた。テルヘルは二人をじっと見つめている。
「では、早速確認してみましょう」
テルヘルは剣を抜くことなく、慎重に石畳を踏み渡していく。ラーンとイシェも後を続いた。
紋様の下には、意外なほど深く掘られた穴が開いていた。
「うわっ、深っ!」
ラーンの声が響き渡る中、イシェはテルヘルの表情に注目した。彼女は少しだけ口角が上がったように見えた。
「よし、ここなら何かあるかもしれない」
テルヘルはそう言って、懐からロープを出し始めた。
「待てよ、テルヘル! 何をするんだ?」
ラーンの言葉にテルヘルは目を細めた。
「これは危険な場所だ。我々が先に降りて確認しなければならない」
「おい、そんな…」
ラーンの抗議もむなしく、テルヘルとイシェはロープを固定し、暗い穴へと潜り始めた。ラーンは一人で残され、不安げに辺りを伺った。
しばらくすると、二人が再び現れた。顔色を変えていた。
「どうだ? 何があった?」
ラーンの問いかけに、テルヘルは沈黙したまま、小さな箱を地面に置いた。イシェがゆっくりと蓋を開けると、そこには輝きを放つ宝石がぎっしり詰まっていた。
「これは…!」
ラーンは目を丸くした。宝石の美しさに息をのんだ。
「よし、これで今日の取り分は…」
テルヘルがそう言うと、イシェは少しだけ眉間に皺を寄せた。ラーンの顔には安堵と興奮の色が広がっていた。しかし、イシェはどこか落ち着かない気持ちでいっぱいだった。