「よし、今回はあの崩れかけた塔だな。噂によると、奥には秘宝が眠っているらしいぞ!」ラーンの豪快な声は、いつも通りイシェの眉間にしわを刻んだ。
「またそんな曖昧な情報?」イシェはため息をつきながら、地図を広げた。「遺跡探索は計画性が重要だ。特に今回はテルヘルさんの依頼で、遺物の独占権が約束されている。失敗は許されない」
ラーンはイシェの言葉を無視して、興奮気味に剣を磨いていた。「大丈夫、大丈夫!俺が先頭に立って道を切り開くからな!イシェは後方支援、テルヘルさんは俺たちの盾になってくれ!」
テルヘルは氷のように冷たい視線でラーンの言動を見つめていた。彼女の目的は遺跡の遺物ではなく、ヴォルダンに復讐するための情報だ。そのために、この3人組と協力せざるを得ない状況だった。だが、この無計画な男には、ただ単なる道具以上の価値はない。
「準備はいいか?」ラーンの声が響き渡り、3人は崩れかけた塔へと足を踏み入れた。薄暗く埃っぽい内部を進むにつれて、緊張感が高まっていった。
突然、床が崩れ、ラーンが転落する。イシェは素早く彼を引き上げた。「気をつけろ!この遺跡は不安定だ」
「くっ…大丈夫だ!」ラーンは立ち上がると、剣を構えて周囲を見回した。その時、奥から不気味な音が聞こえてきた。
「何かいるぞ…」イシェの声が震えた。
影が動き、巨大な獣の姿が現れた。ラーンの剣は獣の体へ深く突き刺さるも、獣は怯むどころか、より凶暴になった。
「これは…!」テルヘルは冷静さを保ち、状況を分析した。この獣は単なる野生動物ではない。何かしらの魔力によって生み出されたものだ。そして、この遺跡の奥深くに、その魔力の源があるはずだ。
ラーンとイシェが獣と対峙する中、テルヘルは一人で奥へと進んでいった。彼女は目的を達成するために、この状況を収束させなければならなかった。そして、そのために必要なものは、この遺跡の真実だった。