ラーンの大斧が石の扉を粉砕した。埃っぽい空気が充満し、奥から薄暗い光が漏れる。
「よし、行こうぜ!」
ラーンは興奮気味に先へ踏み出す。イシェは後ろからため息をつきながら続く。
「また、行き当たりばったりか…。」
「だって、遺跡ってワクワクするだろ!ほら、もしかしたら今回は大穴が見つかるかもよ!」
ラーンの目は輝いていた。イシェはそんな彼を微笑ましく眺めた。
テルヘルが彼らの後ろを歩く。彼女はいつも冷静で、周囲の状況を常に分析しているように見えた。
「この遺跡はヴォルダン帝国の記録にはない。もしかしたら、未公開の財宝がある可能性が高い。」
テルヘルの言葉にラーンとイシェは目を輝かせた。彼らは貧しい生活を送っていたため、財宝への憧憬が強かった。
遺跡の奥深くへと進んでいくにつれて、壁には不思議な文字が刻まれていた。イシェは慎重に壁を調べながら、古代の言語を解読しようとした。
「これは…、ヴォルダンの文字だ。そして…」
イシェは言葉を詰まらせた。壁にはヴォルダン帝国の残酷な歴史が記されていた。
「この遺跡は、ヴォルダンが征服した部族から収奪した財宝を隠す場所だったようだ。」
テルヘルは冷酷な表情で言った。彼女の目は燃えるような怒りを秘めていた。
「ヴォルダンは、全てを奪った。家族、故郷、そして未来さえも…。私は彼らに復讐を果たすために生きている。」
ラーンとイシェはテルヘルの言葉に衝撃を受けた。彼らは今までテルヘルがヴォルダンに何か恨みを持っていることは知っていたが、その詳細までは知らなかった。
遺跡の奥深くには、黄金で輝く宝の山があった。だが、そこに至るまでには、ヴォルダンの残した罠が仕掛けられていた。ラーンとイシェは罠をかわしながら進んでいくが、テルヘルは冷静に状況を分析し、彼らを導いた。
「この宝物は、収奪された人々のものだ。我々はそれを取り戻すのだ。」
テルヘルの言葉に、ラーンとイシェは深く頷いた。彼らは宝物を見つけるために遺跡を探検していたが、そこで出会ったのは、ヴォルダンの残虐な歴史だった。そして、テルヘルという強い意志を持った女性の姿だった。
彼らは宝物と共に、収奪された人々への哀悼の念を胸に遺跡から戻っていくのであった。