ラーンがいつも通り大口を開けて笑い、「今日は必ず何か掘り出すぞ!」と叫んだ。イシェはため息をつきながら、彼の背中に手を当てた。「落ち着いて、ラーン。今日の目標はあくまで調査だ。危険な遺跡に無闇に入るのはやめよう。」
「大丈夫だよ、イシェ!俺たちにはテルヘルさんがいるじゃないか。」ラーンは自信満々に言った。テルヘルは少しだけ唇を曲げて微笑んだ。その笑顔はどこか冷酷で、ラーンの無邪気な明るさと対照的だった。「そうですね。私はあなたたちに安全と成功を保証します。」
遺跡の入り口に近づくと、冷たい風が吹き付け、不気味な影が壁に揺らめいた。イシェは背筋が寒くなるのを感じた。ラーンは全く気にせず、剣を手に取り、遺跡の中に飛び込んだ。イシェはテルヘルに不安げな視線を送ると、深呼吸をして後を追った。
内部は暗く湿っていた。崩れかけた壁には奇妙な模様が刻まれ、埃をかぶった遺物が散乱していた。ラーンは興奮気味に遺物を漁り始めたが、イシェは何かを察知したように周囲を警戒していた。
「何かおかしい…。」イシェは呟いた。その時、地面が激しく振動し始めた。壁から石が崩れ落ち、ラーンはよろめきながら立ち上がった。「なんだこれは!」
その時、遺跡の奥深くから不気味な声が響き渡った。それはまるで生きているかのような声で、聞き慣れない言語を話していた。ラーンとイシェは互いに顔を見合わせた。恐怖と不安が二人の心を支配した。
「これは…」テルヘルが声を張り上げた。「罠だ!」
突然、壁から何者かが飛び出した。それは巨大な影のような姿で、鋭い爪と牙を持つ恐ろしい怪物だった。ラーンは剣を振りかざし立ち向かったが、その攻撃は怪物には全く通じなかった。イシェは恐怖を感じながら、後ろへ後ずさりした。
「逃げろ!」テルヘルが叫んだ。「これは私たちが倒せる相手じゃない!」
ラーンの顔色は青白くなった。「逃げたくない…俺たちは…」
その時、テルヘルの目の色が変わった。彼女は冷静に状況を判断し、一瞬のうちに計画を立てた。そして、ラーンとイシェに指示を出した。「ラーン、怪物に気を取らせろ!イシェ、あの通路へ行くんだ!」
ラーンは驚いたが、テルヘルの言葉に従い怪物へと攻撃を仕掛けた。怪物はラーンの攻撃をかわし、彼を追いかけ始めた。イシェはテルヘルの指示通り、遺跡の奥へ走り込んだ。
彼女は迷路のような通路を抜け、ついに出口を見つけ出した。振り返ると、ラーンが怪物に追われているのが見えた。彼は傷ついて倒れそうになっていた。
「ラーン!」イシェは叫んだ。その時、テルヘルが現れた。「行くぞ、イシェ!」
テルヘルはラーンの元へ駆け寄り、彼を助け上げた。そして、三人で遺跡から脱出した。
外に出た時、イシェは振り返ると、遺跡が崩れ始めていた。怪物は中に閉じ込められ、その姿は見えなくなっていた。
イシェは安堵のため息をつき、ラーンとテルヘルを見つめた。ラーンの顔にはまだ恐怖の色が残っていたが、テルヘルの表情は冷酷さを増していた。
「あの遺跡には何か特別な秘密があるようだ。」テルヘルは言った。「そして、それを手に入れるために、私たちはまた戻らなければならない。」
イシェは不安を感じながらも、テルヘルの言葉に同意した。彼らはまだ何も知らなかった。この遺跡がもたらす反転と、その先に待ち受ける真実について…。