「よし、今日はあの洞窟だ! 伝説の宝が眠ってるって噂だしな!」
ラーンは目を輝かせながら、粗雑な地図を広げた。イシェは眉間にしわを寄せた。
「またそんな話? ラーン、その噂は十年前から流れてるんじゃないか? そもそも、あの洞窟は危険だって何度も言ってるじゃないか。」
「大丈夫だ、イシェ! 俺には何かを感じてるんだ。今回はきっと大穴だ!」
ラーンの自信に満ちた声に、イシェはため息をついた。しかし、彼の熱意を目の前にして反論する気力が湧いてこないのも事実だった。
「わかった、わかった。でも、もしまた何も無かったら、次は俺の言う通りに動けよ。」
「了解! さあ、テルヘルさん、準備はいいか?」
ラーンがそう言うと、テルヘルは冷静な表情で頷いた。彼女の鋭い視線は地図に注がれていた。
「準備は万端だ。あの洞窟には何かがある。私は確信している。」
テルヘルの言葉に、ラーンは興奮し、イシェは不安を感じた。彼らはビレーを出発し、山道を登り始めた。
洞窟の入り口は暗くて湿っていた。空気は重く、不気味な静寂が支配していた。
「ここだな…」
ラーンが先頭に立ち、剣を構えた。イシェは懐中電灯の光を照らしながら慎重に足を踏み入れた。テルヘルは後方から二人を見つめていた。彼女の目は鋭く、何かを探しているようだった。
洞窟内は狭く、岩肌が剥落し始めていた。一歩一歩が重く感じる。
「ここには何かがいる気がする…」
イシェは不吉な予感に襲われた。ラーンは意に反して彼の言葉を反芻した。
「大丈夫だ、イシェ。何もいない。」
だが、その言葉も届かないうちに、洞窟の奥から、何者かの気配を感じ取った。それは獣のような唸り声と共に、轟音と共に地面を揺るがした。