ラーンが興奮気味に遺跡の地図を広げると、イシェは眉間に皺を寄せた。「またあの迷宮か？あの複雑な構造、嫌になるぞ。」
「だが、イシェ、あの迷宮には未探索の区域があるんだぞ！もしかしたら、そこで大穴が見つかるかも！」ラーンの目は輝いていた。
イシェはため息をつきながら地図を睨んだ。「大穴？またその話か。現実的になれよ、ラーン。」
「現実的なのはテルヘルだ」とラーンの視線はテルヘルに向かった。彼女は冷静に地図を指さし、「あの区域にはヴォルダンの紋章が刻まれた遺物があると記録されている。我々はそれを奪取するのだ」と宣言した。
「またヴォルダンか…」イシェは呟いた。テルヘルの目的は彼らにとってあまりにも重い。ヴォルダンへの復讐という、暗い影に覆われた目標。
ラーンは何も言わずに頷き、剣を手に取った。彼はいつも通り、テルヘルの言葉に反発するわけでもなく、イシェの現実的な意見を無視するわけでもなかった。ただ、彼の心には「大穴」という夢があり、その夢を実現するために、彼はテルヘルに従う道を選んだのだ。
迷宮の入り口で、ラーンは深呼吸をして一歩踏み出した。彼はいつも通り、希望に満ちた表情をしていたが、イシェの目は複雑な感情を秘めていた。彼はラーンの夢を応援したい気持ちと、テルヘルの影に飲み込まれていくラーンの姿への不安を感じていたのだ。そして、この状況から抜け出すための糸口はどこにあるのか、彼自身も模索しているようだった。