ラーンの大 hammer が石壁を叩き割った時、埃の粉塵が日差しを受け、一瞬の間、空中に金色に輝く粒子となって舞った。イシェは息を呑んだ。あの瞬間だけ、荒廃した遺跡の中心部が、まるで宝石箱のように輝いたように見えた。
「よし、ここだな」
ラーンはそう言って、胸を躍らせながら奥へ進もうとした。だがイシェは彼の腕を引き止めた。
「待て、ラーン。あの光…何か変だ。」
イシェの視線は、壁に反射する光ではなく、その奥深くへと向けられていた。壁のひび割れから漏れる薄暗い空間には、何かが蠢いているように見えた。
「変…？何のことだ？」
ラーンの問いかけを無視して、イシェは小さな鏡を取り出した。その鏡面は、まるで静かな湖のようだ。そこに映るのは、ラーンとイシェの姿ではなく、奥へと続く通路と、そこをゆっくりと進む影のようなものだった。
「あれは…？」
ラーンの視線が、鏡に映る影に釘付けになった。影はぼんやりとしており、本来の姿を捉えることはできなかったが、その動きは不自然なほど滑らかで、まるで水面に浮かぶ水草のように、ゆっくりと蛇行しながら進んでいた。
テルヘルが近づき、イシェの肩越しに鏡の中を見つめた。
「あれは…ヴォルダン軍の魔術師か？まさかこんな場所に…」
彼女の言葉に、ラーンは一瞬にして冷静さを取り戻した。彼はイシェの手を放し、剣を構えた。
「準備だ！あの影が何者なのか分からないが、襲いかかってくるかもしれない。」
イシェは頷き、小さなナイフを握り締めた。だが、彼女の視線は鏡に映る影から離れず、その不気味な動きを注視していた。