ラーンが巨大な石扉を蹴り飛ばすと、埃と影が立ち込める空間に広がった。イシェは懐中電灯の光を向けると、壁一面に描かれた奇妙な文字が浮かび上がった。
「また謎の古代文字か…」イシェはため息をついた。「一体何を意味するんだろう?」
「わかんねーよ」ラーンは肩をすくめた。「でも、きっと何か宝の地図とか書いてあるはずだ!ほら、見て!」
彼は壁の一角を指さした。そこには、幾何学模様が複雑に組み合わされた図形が描かれていた。
「これは…」イシェは眉間にしわを寄せた。「まるで…都市の設計図みたいだ」
「都市?」ラーンは首をかしげた。「遺跡の中に都市があるなんて聞いたことないぞ」
その時、テルヘルが後ろから声をかけた。「あの図形…私は見たことがある」
彼女は二人に振り返り、低い声で言った。「ヴォルダンにある古い書物に、似た図形が載っていた。それは…」
テルヘルの目は燃えるような光を放った。「反逆者の都市。かつてヴォルダンに反抗した人々が築いた秘密の都市だ」
ラーンの顔色が変わった。「反逆者か…?」
「その都市には、ヴォルダンに立ち向かう武器が眠っていると伝えられている」テルヘルは言った。「そして、その鍵となるのがこの遺跡にある…」
イシェは不安げな表情を浮かべた。「でも、なぜヴォルダンの情報が…」
テルヘルは微笑んだが、その笑顔には冷酷さが宿っていた。「私は、ヴォルダンに全てを奪われた。私の復讐を果たすために、あらゆる手段を使う」
ラーンは拳を握りしめた。「俺たち…この都市を解放するのか?」
イシェは言葉を失った。彼女の頭の中では、ラーンの言葉がこだましていた。そして、どこか遠くで、反乱の炎が燃え上がり始めたような気がした。