ラーンの剣が石壁に激突し、砕けた石塵が舞い上がった。
「おい、イシェ、まだか?」
彼は不機嫌そうに声をかけた。狭い遺跡の奥深くで、イシェは慎重に壁を確かめていた。
「少し待ちなさいよ。何か変だ」
イシェの声はかすれていた。ラーンはイシェがいつもと違うことに気づいた。彼女は普段なら冷静さを保っているはずなのに、今、彼女の表情は不安げだった。
「何があったんだ?」
ラーンの問いかけに、イシェは小さくうなずいた。
「この壁…何かを感じる」
彼女は壁を指さした。「まるで…双子のような気配を感じるの」
「双子?」
ラーンは眉をひそめた。「そんなものいるわけないだろう」
テルヘルが近づいてきて、彼らをじっと見つめていた。彼女の瞳は鋭く、何かを察しているようだった。
「彼女が言う通りだ。この遺跡には、ある伝説が残っている」
テルヘルはゆっくりと口を開いた。「かつて、この地に双子と呼ばれる強力な魔物が住んでいたというのだ。彼らは互いに争い、そして滅びたという…」
ラーンの背筋にぞっとする寒気が走った。イシェの言葉とテルヘルの説明が重なり、不吉な予感がした。
その時、壁から不気味な音が響き渡り始めた。それはまるで、誰かが苦しんでいるような、悲鳴のような音だった。