ラーンの大笑い声がビレーの朝の静けさを打ち破った。イシェは眉間にしわを寄せていた。「また大穴の話か？ 昨日も結局、錆びた剣と割れた壺だけだっただろう？」
「いや、今回は違う！ この遺跡、なんか違う感じがするんだ！」ラーンの瞳は興奮で輝いていた。イシェはため息をつきながら、準備を手伝い始めた。テルヘルはテーブルに広げられた地図を指さした。「この遺跡、ヴォルダンとの国境に近い。何か重要なものがある可能性が高い。危険だが、報酬も大きいだろう。」
ラーンの顔色も一変した。イシェの視線を感じ、少しだけ照れたように咳払いをした。「あの、危険は承知の上で…」
「わかってるよ、ラーン。いつも通り、我々が尻拭いするんだろう？」イシェは苦笑いを浮かべた。テルヘルが鋭い目で二人を見つめた。「今回は違う。お前たちの力を必要としている。そして、この仕事は、友誼を深める良い機会になるだろう。」
遺跡の入り口で、冷たい風が吹き抜けた。ラーンは剣を手に取り、イシェと目が合った。イシェは小さく頷き、テルヘルに続くように一歩踏み出した。狭くて暗い通路を進んでいくにつれ、緊張感が高まっていった。
突然、床が崩れ始めた。ラーンがイシェを引っ張り上げると、後ろから巨大な石が転がり落ちてきた。ラーンの顔は蒼白になった。「イシェ！」
イシェは足首を痛めて動けなかった。テルヘルが素早く駆け寄って、イシェの手を掴んだ。「大丈夫だ。持ちこたえてくれ。」
ラーンは石を押し上げようと必死に力を込めた。しかし、重すぎる。その時、イシェが小さな声で言った。「ラーン、あの剣…！」
ラーンの目を見開いた。錆びた剣に刻まれた奇妙な模様。イシェの言葉の意味を理解した瞬間、ラーンは剣を石に叩きつけた。剣が光り、石は砕け散った。イシェは安全な場所に運び上げられた。
「お前…本当に強いんだな、ラーン。」イシェは息を切らして言った。ラーンの顔には、安堵と喜びの表情が広がっていた。
遺跡の奥深くで、彼らは歴史に埋もれた秘密を発見する。そして、友情の強さが、どんな困難をも乗り越えられることを改めて実感することになる。