「おい、イシェ、準備はいいか？」ラーンが腕を振るいながら、イシェの顔色を伺った。イシェはいつものように、細長い指で地図を広げ、慎重に確認していた。「まだ、少し…」と呟きながらも、地図をラーンの目に近づけた。「よし、わかった。今日はあの崩れた塔跡からだな」ラーンは地図を叩いて決めた。
「あの塔跡は危険だって聞いたぞ」イシェが心配そうに言った。「何だ、怖いか？」ラーンの挑発的な言葉に、イシェは小さくため息をついた。「そんなことないわよ…ただ、念のため慎重に行きたいだけよ」イシェの冷静な対応に、ラーンは少しだけ悪びれるように笑った。
その時、背後から低い声が響いた。「準備はいいか？」テルヘルが鋭い眼差しで二人を見下ろしていた。「ああ、準備万端だ」ラーンは意気揚々と答える。「よし、では行こう。今日の目標はあの遺跡の奥深くに眠る『黄金の心臓』だ」テルヘルは地図に指を落としながら言った。
三人は互いに警戒し合いながら、崩れた塔跡へと足を踏み入れた。朽ちた石畳の上を進んでいくうちに、冷たい風が吹き付け、不気味な影が壁に揺らめいた。「ここには何かいる気がする…」イシェは緊張した表情で周囲を警戒した。ラーンは剣を握りしめ、テルヘルは静かに周りを見回していた。
塔の中へと進むにつれて、空気は重くなり、息苦しくなった。壁一面に奇妙な文字が刻まれており、不吉な予感を掻き立てる。ラーンの足音だけが、静寂の中に響き渡る。「ここだ」テルヘルは突然立ち止まった。「黄金の心臓はこの奥にあるはずだ」彼女は壁に手を当てると、何かを感触で探しているようだった。「よし、開けろ！」ラーンの大声が響いた。
しかし、壁は動かなかった。イシェは不安そうに言った。「もしかして、罠なのかも…」その時、壁の上から石が落ちてきた。ラーンは剣で受け止めたが、その衝撃によろめいた。「敵だ！」テルヘルが叫びながら、剣を抜いた。
影の中から何者かが現れた。それは、ヴォルダンの兵士だった。「ここは立ち入り禁止だ！すぐに引き下がりなさい！」兵士の言葉に、ラーンは激昂した。「何だって？俺たちはここに宝を掘り当てに来たんだぞ！勝手に帰れ！」ラーンは剣を振りかざし、戦いを挑む姿勢を見せた。
イシェはラーンを制止しようとしたが、もう遅かった。テルヘルも冷静さを失い、兵士たちと激しく対峙し始めた。「やめてください！これはただの誤解です！」イシェの叫び声は、激しい戦いの音にかき消されてしまった。
三人はヴォルダン兵との戦いに巻き込まれ、彼らの参加を許さぬ運命に立ち向かうことになった。