ラーンが石の破片を蹴飛ばすと、イシェに睨まれた。「おい、落ち着けよ。見つかったら困るだろ?」「だって、こんな場所に何で卵があるんだよ!」ラーンの足元には、明らかに遺跡の雰囲気とは異なる白くて滑らかな卵があった。「もしかして、何か特別な卵かもな」イシェは慎重に卵を持ち上げた。「確かに、今まで見たことない形だ。テールの調査依頼書にも載ってないし…」
「そんなことより、早く逃げろって!」ラーンの顔色が変わった。「あの音…ヴォルダンの兵士だ!」イシェの心臓が激しく鼓動した。テルヘルは言った。「遺跡の奥に何かあるらしい。卵も関係があるかもしれない。とにかく、奴らから逃げるんだ!」
三人は薄暗い通路を駆け抜け、崩れそうな石段を飛び越えた。後ろから聞こえる兵士たちの足音と叫び声が、彼らの背中に迫る恐怖を告げている。ラーンの剣が光り、イシェは素早く壁に隠れた。「卵を…!」テルヘルが叫んだ瞬間、床が崩れ、三人は奈落へと落ちていった。
意識を取り戻した時、ラーンは目の前に広がる光景に息を呑んだ。そこは広大な地下空間で、天井からは光が降り注いでいる。そしてその中央には、巨大な卵が安置されていた。それはまるで、この遺跡を守るように鎮座しているかのようだった。イシェは目を丸くして「あの…卵?」と呟いた。「まさか…」テルヘルは静かに頷き、「ヴォルダンに奪われたもの…それが卵だとしたら…」
その瞬間、地下空間の壁が崩れ始め、大量の砂埃が舞い上がった。ラーンが叫んだ。「また兵士か!」だが、そこに現れたのは兵士ではなく、巨大な影だった。それは卵から生まれた、何か恐ろしい存在だった。