ビレーの酒場が賑わう夜だった。ラーンは酔った勢いで大口を開けて歌い、イシェはいつものように眉間に皺を寄せながら彼を見つめていた。
「おい、イシェ。お前も歌えよ!」
ラーンの声は酒場の喧騒に負けないほど大きく、イシェは苦笑した。
「いいから静かにしろ。恥ずかしい。」
すると、扉が勢いよく開けられ、テルヘルが入ってきた。彼女の顔つきは険しく、いつもより冷たい空気をまとっていた。ラーンとイシェはざわめく酒場の声を無視して彼女の方を向き、沈黙した。
「新しい仕事がある」
テルヘルの言葉は短く、力強かった。ラーンの顔が明るくなり、イシェはため息をついた。
「何だ?またヴォルダンか?」
「違う。今回はもっと大きな話だ。古い遺跡の地図を手に入れた。そこには失われた王国の宝庫があるという噂だ」
ラーンの目は輝き、イシェも興味を持った。しかし、テルヘルの次の言葉が二人の表情を曇らせた。
「だが、その遺跡はヴォルダンに占拠されているらしい。我々は彼らを追い出して、宝庫を手に入れなければならない。」
ラーンは立ち上がり、テーブルを叩いた。
「よし!やるぞ!」
イシェはテルヘルと目が合った。彼女の瞳には、復讐以上の何かが燃えていた。
「わかった。準備は整っている」
イシェの言葉は決意に満ちていた。三人は酒場から出て、夜の闇へと消えていった。