「今日は何かいい予感がするんだ」
ラーンがそう言うと、イシェは眉間にしわを寄せた。
「またそんなこと言うなよ。遺跡探索なんて、予感なんて当てにならないだろ」
「でも、ほら、今日の天気も晴れてるし、空気がなんか清々しいと思わないか?」
ラーンの言葉に、イシェはため息をついた。ラーンの楽観的な性格は、イシェにとってはいつも頼りになる一方で、時にはいら立ちを覚えることもあった。特に遺跡探索に関しては、ラーンの無計画さが危険な目に遭う原因になることも少なくなかった。
「わかった、わかった。でも、今日は本当に気をつけろよ」
イシェがそう言うと、ラーンはニヤリと笑った。
「分かってるよ、イシェ。今回は必ず大穴を見つけるぞ!」
三人はビレーの街はずれにある遺跡へと向かった。遺跡の入り口には、古びた石碑が立っていた。石碑には、かすれた文字で何かが書かれていたが、ほとんど読めないほど劣化していた。
「ここだ、イシェ!ほら、この石碑、なんかいい感じじゃないか?」
ラーンは興奮気味に石碑を指さした。イシェは、ラーンの様子を見て、ため息をつきながら石碑に近づいた。
「何書いてあるんだろう?」
イシェが石碑の文字をなぞりながらつぶやくと、テルヘルが言った。
「この遺跡には、かつて占いの民が住んでいたという記録がある。石碑には、おそらく彼らの予言が刻まれているはずだ」
テルヘルはそう言うと、ポケットから小さな宝石を取り出した。宝石は、淡い紫色をしており、不思議な光を放っていた。
「これは、占いの道具なんだ。この宝石に石碑の文字を映すと、その意味を読み解くことができるらしい」
テルヘルが宝石を石碑に当てると、宝石は一瞬で紫色に輝き、そこから煙のようなものが立ち上り始めた。煙が形を変えながら空中に浮かぶと、やがて一つの像になった。それは、女性の姿をした精霊だった。精霊は、ゆっくりと口を開き始めた。
「この遺跡には、大きな宝が眠っている…しかし、それを手に入れる者は、試練に立ち向かわなければならない…」
精霊の言葉が響き渡ると、宝石は元の紫色に戻り、煙も消えてしまった。
ラーンは興奮気味に言った。
「よし!ついに大穴が見つかるぞ!」
イシェは、ラーンの様子を見て、複雑な表情を浮かべた。テルヘルの占いは、確かに宝の存在を示唆していたが、同時に試練という言葉も示唆していた。イシェは、この遺跡には何か大きな秘密が隠されていると感じ、不安と期待が入り混じった気持ちで遺跡へと足を踏み入れた。